フィリピンは英語を話したり理解できる人たちがすごく多い国です。それもそのはず、英語はフィリピンの公用語のひとつになっているのです。
でもごくたま~に不思議な英語に出会うこともあります。
フィリピン人の英語はネイティブの英語と異なることがあります。
もし耳慣れない英単語やなじみのない用法に出会ったら、それはフィリピン英語/フィリピーノ・イングリッシュと呼ばれるものかもしれません。
またフィリピンの人たちが地元の言葉をしゃべっている時に、急に英語を混ぜてくるのを見たことがあるかもしれません。それはタグリッシュと呼ばれる話し方の可能性があります。
タグリッシュは、タガログ語と英語(イングリッシュ)を合体させた名前です。
【フィリピン英語】と【タグリッシュ】の定義
フィリピン人でもフィリピン英語とタグリッシュの違いを説明できない人はいます。私が知っている定義は以下です。
タグリッシュはタガログ語と英語を混ぜて話すスタイルのこと。(コンニョ/conyoとも呼ばれているようです。ただ、「コンニョ」という言葉はネガティブな意味があるとも聞いています。)
フィリピン英語はフィリピン独特の英語っぽい単語、フィリピン独自の意味を持つ英単語、フィリピン独自の使い方をする英単語などのこと。
【フィリピン英語単語】の例
タグリッシュは本来の英語とタガログ語をミックスして話すスタイルのことですので、あまり説明はいらないと思います。ですので、ここからはフィリピン英語とされる単語をご紹介します!
open the light/オープン・ザ・ライト
フィリピンの人たちは、照明をつけることを「open the light」(オープン・ザ・ライト)と言うことがあります。本来の英語ではこういう言い方はしません。
presidentiables/プレジデンシャブルズ
「presidentiables」(プレジデンシャブルズ)は一見英語に見えるかもしれませんが、英語ではありません。この単語はフィリピンで「大統領候補者」などの意味で使われてきたのですが、本来の英語では「presidential candidates」と言わなければなりません。
近年フィリピンで、この「presidentiables」という言葉が議論になったようです。その際に多くのフィリピン人が間違いに気づいた経緯があるので、最近ではあまり使われないらしいです。
ber months/バー・マンツ
「ber months」(バーマンツ)は9月~12月の4か月を意味します。
この4か月をそれぞれ英語表記にすると、September、October、November、Decemberとなって、すべて「ber」が付いている単語なのが分ります。「ber 」が付く複数の月(months)ということで、ber months となったようです。
comfort room/コンフォートルーム
「comfort」は「なだめる、快適さ」などの意味です。フィリピンでは「トイレ」や「お手洗い」の意味でとても良く使うようです。短くして「CR」とも言われます。
例えば北米の英語では、トイレは「rest room」とか「bathroom」が一般的です。
vulcanizing shop/ヴォルカナイジング・ショップ
「vulcanizing shop」(ヴォルカナイジング・ショップ)は、フィリピンで「タイヤ修理専門店」という意味で使われます。
かなりよく使われるフィリピン英語だそうです。正真正銘の英語だと思っている人が少なくありませんが、英語圏では「タイヤ修理専門店」の意味では通じません。(単語自体は英単語です。)
frigidaire/フリジデア
「frigidaire」(フリジデア)は「冷蔵庫」の意味で使います。英語の「refrigerator」「fridge」(冷蔵庫)にスペルも音も似ていますね。
実は「frigidaire」はアメリカの冷蔵庫メーカーだそうです。これがいつの間にかフィリピンではすべての「冷蔵庫」を指すようになったようです。
冷蔵庫を現在でも「フリジデア」と呼んでいるのは、田舎の人たちであるとの情報もあります。もしくは、おじいさんやおばあさんの世代が使う言葉というイメージだと言う人もいます。
もちろんフィリピンは広い国ですので、地域によってはそれほど田舎じゃなくても現役で使われている可能性はあります。
英語圏では、この具体的な冷蔵庫メーカーの名前に「冷蔵庫」という意味はないそうで、ちょっと古めのフィリピン英語という位置づけかと思います。
pentel pen/ペンテルペン
「pentel pen」(ペンテルペン)は日本の「ぺんてる」から来ていて、フィリピンでは単に「黒いペン」を意味するようになったようです。
ただし地域によって「pentel pen」の定義にはズレがあります。
ある所では「油性の黒色のペン」を意味し、またある所では「油性、水性に関わらず黒いペン」を意味します。真逆の「水性の黒いペン」を意味する地方もあるらしいです。
何はともあれ日本の企業名や商品名がこのように使われるのはちょっとうれしいです。
chancing/チャンシング
「chancing」は、とある英語ネイティブのサイトでフィリピン英語として紹介されていたものですが、私が調べた限りでは、これはフィリピン英語ではないかもしれません。
これは、発音がよく似ている「tsansing」というタガログ語の単語のことを誤解して紹介した可能性があります。発音が似ているので、英語を間違ったように聞こえたのかもしれません。
「tsansing」は「相手を性的な意味でその気にさせる試み」のことを指します。(特に試みがうまくいっていない時に使うそうです。)
「tsansing」はタガログ語なので、英語のように「chancing」と書くことはないそうです。これは、英語でもフィリピン英語でもなく、純粋なタガログ語である可能性があると思いました。
フィリピン英語的な表現
文法的にも意味的にも100%間違いとは言えないものの、フィリピン英語的と言える表現もあると思います。
またフィリピンでよく聞かれる「this one」とか「that one」という表現があります。文法的にも意味的にも伝わるのですが、ネイティブがあまり使用しない場面で乱用されているという意味で、フィリピン英語的と言えそうです。
また、「avail」や「scheme」という英単語もネイティブが使用しない場面で出てくると言われています。
『セブリッシュ』もある!
「タグリッシュ」と「セブリッシュ」の共通点と違い
タグリッシュはタガログ語と英語を混ぜて話すスタイルで、セブリッシュはセブアノ語に英語を混ぜて話すスタイルです。
タグリッシュは有名ですが、セブリッシュはそれほど有名ではないかもしれません。タグリッシュは主にタガログ語の話者の多いエリアで、セブリッシュはセブ周辺で使われます。
タグリッシュとセブリッシュの印象は違う
タグリッシュとセブリッシュが聴き手に与える印象が全く違うのも面白いと思います。
タグリッシュは富裕層を連想させるような、ちょっとお高くとまっているような印象を与えるそうです。そのためタグリッシュを話したくない、またはあまり好きではない人もちらほらいます。
それでもタグリッシュを使用する人たちはとても多く、特に有名人はタグリッシュ話者だらけです。タグリッシュを話す人たちからは、ただ単に「タガログ語よりも英語の方がしっくりくる場合には英単語を使用している」という意見もあります。
一方、セブリッシュはお遊びのようなものらしいです。セブリッシュは可愛らしかったり、面白い雰囲気を与えるそうです。
なので、ちょっとコミカルな感じでしゃべりたい時にセブリッシュを使う若者はいるようです。「シリアスな場面ではとても使えない」ということでした。