今回は、フィリピンのタトゥー事情や伝統的なタトゥーなどについてご紹介します。
現代のタトゥー事情
日本の銭湯や温泉などには刺青のある人たちが入れないことがありますね。
日本ほどではないにしろ、フィリピンにも刺青(タトゥー)に対してネガティブなイメージを持つ人たちもいるようです。
タトゥーのイメージ
一部の年配のフィリピン人のなかにはタトゥー対して「囚人」や「前科者」というイメージを持っている人がいるそうです。このイメージはむかしの囚人が実際にタトゥーをしていたことから来ています。
過去にはこのイメージのせいで、伝統的なタトゥーをしている一部の少数民族までもが偏見の目にさらされることもあったと聞いています。
現代のフィリピン人はタトゥーを入れることにほぼ抵抗がなくなっていて、逆にとても人気があるそうです。自分にとって大切なメッセージを彫ったり、人生で大きな出来事があった時に記念として気軽にタトゥーをしたりする人もいます。
マニラで実際にタトゥーをした人の話しによると、5㎝×5㎝ほどのタトゥーを1500ペソくらいで彫ってもらえたそうです。なかには上手くない彫り師もいるので気を付けているということでした。
マニラのタトゥーコンベンション
今年18回目を迎えた「ドゥッドゥータン・タトゥーコンベンション」(Dutdutan Tattoo Convention)はマニラで行われてきたタトゥーの祭典です。
国内外からタトゥー・アーティストや愛好家などがタトゥーを楽しむために集まるイベントだそうです。
アーティストたちがタトゥーで競うコンテストも行われますし、一般の人たちがアーティストにタトゥーを彫ってもらうこともできるそうです。タトゥー関連のお土産も販売しています。
近年ではフィリピンの伝統的なタトゥーにも注目があつまり、都市部でもそれと似たデザインのタトゥーを彫るアーティストが出てきましたが、現時点では西洋的でモダンなタトゥーのほうが人気があるようです。
フィリピンの伝統的なタトゥー
フィリピンには伝統的なタトゥー文化が点在しています。これらは各地で伝統として守られてきたものです。
私がお話を聞いたのは一部の人たちで、他の地域にもいろいろなタトゥー文化があると思います。何卒ご了承ください。
ルソン島山岳地帯のカリンガタトゥー
ルソン島北部の山岳地帯に住むカリンガ族に古くから伝わる「カリンガタトゥー」。男性にとっては勇敢な戦士の証として、女性にとっては美しい装飾としての意味があるようです。
タトゥーに使われる模様にはそれぞれ意味があり、その神秘的で異文化な雰囲気も人気の一因なのだと思います。
人間国宝級のタトゥーアーティスト『ワン・オドゥ』
カリンガタトゥーの「最後の彫師」として有名なのが、この記事を公開した時点で御年101歳のワン・オドゥさんです。英語では「ワング・オッド」(Whang Od)と発音します。
彼女はフィリピンの人間国宝の呼び声高いカリンガ・タトゥーアーティスト(マンババトック/mambabatok)です。
彼女はタトゥーを彫る際、竹の棒にレモンの木のトゲを装着したものを使うそうです。(異なる情報もあります。)それをまた違う棒でたたきながら炭を入れて絵柄を書いていきます。
炭、水、サトウキビの汁を少々を混ぜたものをインクとして使用しているようです。
オドゥさんのキャラクターはユニークです。
一部の情報によれば、気が進まない場合はタトゥーをしないことがあるといいます。また必ずしもお客さんがタトゥーを入れてもらいたい場所にしてくれるわけではないようです。
なかでも興味深かったのは、気に入った男性客の大切な部分をタッチしてくることです。(服の上からです!)ネットを検索すると、白人男性の大切な部分をタッチする彼女の姿が写っている画像が見つかるかもしれません。悪気もなく、みんなの前で堂々としています…
カリンガへの道のり
オドゥさんは後進の育成もしているため、その意味では「最後の彫師」とは言えないかもしれませんが、今でも彼女にタトゥーをしてもらいたいと国内外からたくさんの人たちが訪れます。
フィリピンの秘境と言われる山岳地帯の道中は長く、途中からは歩かなければならないそうです。
このあたりの山岳地帯が秘境として残っている理由の一つとして、「首狩り」の慣習が認知されていたことがあるといいます。恐ろしいのでよそ者が寄り付かなかったというわけですね。
ビサヤ地方のピンタド・タトゥー
ビサヤ地方には「ピンタド・タトゥー」という伝統文化が点在していました。もともとは、れっきとした刺青でしたが、現在では数週間で消えてしまうヘナが使用されることがほとんどのようです。
セブで開かれる有名なお祭り「シヌログ」の際にも、たくさんのヘナアーティストが商売をしているので、誰でも気軽にピンタドタトゥーを体験することができるそうです。
レイテ島タクロバンのお祭りなどでは、顔や体にアートをほどこしたたくさんの地元民の姿を見ることができるといいます。