フィリピンでは「サンミゲル」や「レッドホース」など、ビールがとても人気です。一方で、フィリピン独自の地酒のようなものも存在します。
今回はフィリピンのお酒についてご紹介します。
フィリピンのヤシ酒
ヤシの醸造酒「トゥバ」と蒸留酒「ランバノグ」はフィリピンの伝統的なお酒です。好き嫌いはあると思いますが、ほとんどのフィリピン人がその存在を知っているようです。
トゥバ
トゥバはヤシの樹液からつくる醸造酒で、日本語では「ヤシ酒」、英語では「パームワイン」(palm wine)ともよばれます。トゥバは地域によって「トバ」や「チュバ」と発音することもあります。
トゥバは「ココヤシサップ」と呼ばれるココヤシの樹液からつくられます。
地元の人によると、朝のうちのトゥバは非常に甘く、ジュースとして飲まれることがあります。午後3時ごろまで待ってからとると、酸っぱくなっているらしいです。ただし、ある地元の人によると、通常は酢になるまで2~3週間かけるらしいです。その人によると、トゥバはー
- 最初はジュース↓
- 2~3週間でアルコール↓
- 1か月ほどでお酢!
となるようですが、これほど時間はかからないと言う人もいます。
この間、室内で保存しますが、アルコールとして飲みたい場合はガラス製の容器に入れ、酢として使用したい場合はプラスチックに入れる、なんてこともあるらしいです。(理由はよく分かりません。)
一般的にトゥバは、アルコール飲料として飲むよりも、お酢の状態で使う方がポピュラーな印象を個人的には受けます。お酒のトゥバをよく飲むのはどちらかというと田舎のほうが多いように感じました。
トゥバの色は茶色っぽいオレンジのような色で、服にこぼしたりするとシミになるそうです。酸味や苦みがあるため、コーヒー、レモンジュース、オレンジジュース、マンゴージュースなどと混ぜて飲む人もいるそうです。
フィリピンでは、お酒と甘い飲みものを混ぜて飲むのがとてもポピュラーで、アルコールの種類にもよりますが、コンデンスミルクや粉ジュースを混ぜることもあります。
お酢のトゥバは市販もされています。スーパーなどでは「お酢」コーナーに陳列されているそうです。
「ホワイトトゥバ」と呼ばれる甘くてアルコール度数が低い状態のトゥバを飲む場合もあるようです。
トゥバを飲みなれない人が飲むと、おなかの調子が悪くなったりするらしいので注意が必要です。
ランバノグ
ランバノグはトゥバからつくられる蒸留酒です。アルコール度数は40度前後からそれ以上のものまで様々です。フィリピンでは安くて強いお酒として知られているようです。
市販のものには、リンゴ味、イチゴ味、メロン味、レーズン味、バブルガム味など様々なフレーバーがついているものがあります。ピュアなランバノグの色は無色ですが、フレーバーをつけたり混ぜ物をしたランバノグは様々な色をしています。
トゥバは日本へのお土産にできるかは分かりませんが、ランバノグはお土産にもできそうです。(味はよく分かりませんが…)
家庭ではランバノグに何か混ぜて飲むこともあるそうです。私が教わった飲み方は、ランバノグに卵、オレンジジュース、砂糖少々を加えて飲む方法です。
他のものを混ぜたランバノグを「気持ち悪い」と感じる若者たちもいるようですが、一部では健康に良いと信じられている面もあります。産地や地方ではランバノグを囲んで仲間と回し飲みする慣習も残っているようです。
ランバノグの産地「ケソン州」
ランバノグの産地として有名なのが、ルソン島南部のケソン州(Quezon)です。(ケソン市とは異なります。)ランバノグの人気が高い地域と聞いています。
危険なランバノグに注意
ランバノグは信用できるメーカーのものでないとよくわからない混ぜ物が入っているとの噂も聞くので気を付けたいところではあります。
ランバノグやトゥバはビールなどよりも安いことがあるらしく、地域差はあるものの現在でもまだまだ需要があるようです。
ルソン島北部のお酒
フィリピンは多民族国家で、ルソン島北部にもむかしから異なる言語や方言を持つ人々が住んでいます。ここからはルソン島北部に伝わるお酒をご紹介します。
バシ
バシ(basi)はさとうきびで作られる醸造酒です。
ルソン島北部のイロカノ族のお酒と聞きました。イロコス地方のラ・ウニョン(ラウニオン)のナギリアンが産地として有名です。ここにはバシ専門店やたくさんのメーカーが集まっているそうです。
製造行程で樹皮を加える作り方もあるようです。色は白っぽいものをはじめ、作り方によって様々な色をしているそうです。地元の人によると(サトウキビが原料でも)味はあまり甘くはないと言っていました。
若い世代にはあまり人気がないようですが、イロカノ族のお祭りや結婚式には登場するお酒です。
タプイ
タプイ(tapuyまたは、tapey)は、ルソン島北部のイフガオ族など、イゴロットのいくつかの部族に伝わるお米のお酒でライスワインともよばれます。さすが、世界遺産の棚田があるだけのことはあります。
以前は原料に赤米を使用していましたが、近年では白いお米を使うようになっているそうです。炒ったお米を使用するところが特徴的です。
需要が低下しているようで残念ですが、結婚式やお祭りなどのおめでたい日には飲まれるそうです。
フルーツ酒
ルソン島北部の標高が比較的高い地域では、涼しい気候を生かしてイチゴをはじめとした様々なフルーツ栽培が盛んです。こういった地域では、様々なフルーツ酒も盛んに製造されているそうです。